寮の自室。身体が熱く、訓練での熱が抜けきっていないのかと考えつつ畳にごろりと横になる。鼻に香るい草と、頬に触れるその冷たさを感じた。訓練室でも借りて自主練すべきだろうか。どうにも身体に熱が籠っている。最近は授業やら訓練やらで自分の「炎」の個性にも慣れてきたと思ったのだが、まだまだこれまで碌に使わずにきた弊害は大きいようだ。
考えていても仕方がない。訓練室を借りに行こうと身体を起こす。1度大きな氷塊でも作れば解消されるだろう。そう考えるのと同時にぶわりと全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。何が起きたのかと考えるのと口から声が出るのはほぼ同じだった。

「っしゅん!」

口から出た声に自分でも少し驚く。鼻がむずむずする、とは思っていたがまさか風邪をひいたのか。痒いような感覚がまだ鼻に残っている。と、再び出る。今度は鼻ごと口を手で覆った。ズビ、と鼻をすすっておさまったのだろうかと鼻下をこすった。まだ違和感の残る鼻がなんだか痒くて生理的に湧き上がる鳥肌が止まらなかった。

「ん、っっしゅ!!」

3度目、また出たくしゃみを抑えようとして失敗し、少し高い変な声が出る。まだ鼻のかゆみと違和感は残ったままだった。
そういえばそろそろ身体にガタが出る頃だから体調には気をつけろと先生もHRで言っていた。言われた矢先に、とは思うが寝れば収まるだろう。いつも身体の中を走る熱と冷気を操っているのだ。眠って調整すれば問題ない。
そう根拠のない自信を持って、どこか重たさを増した身体を横たえたまま眠ろうと瞳を閉じる。口から漏れた息が、炎を出している時のような熱を帯びている気がした。